放射性物質測定用遮蔽体の効果について
放射性物質測定用遮蔽体と試料容器についてで、記述した遮蔽体の効果判定をしてみた。
バックグランドの遮蔽効果
まずは、ブランクでの比較結果でバックグランドからの放射線をどれだけ遮蔽できているかを確認してみる。
なお、測定条件は以下全て18000秒。特に記述がなければ、ブランクを除き5 mLの小試料用容器に試料を入れている。このスペクトルは、最大値ピークでスケールが変わる対数グラフである。
パルス数比では95%以上の遮蔽性能という結果だった。
遮蔽無しでは、環境中にある放射性セシウムの影響でピークが見えるが、遮蔽するとピークは見えない。試料のセシウムなのか環境由来のセシウムなのかが区別できそうである。
なお、遮蔽では80 keVあたりにピークがあるが遮蔽体である鉛が出す特性X線らしい。これは銅の内張りなどで対策が可能らしい。今後の検討課題である。
明らかに放射性物質であるものを測る
ランタンのマントルを遮蔽体ありなしで測った結果がこれだ。
あまり違うようには見えない。
なお、このマントルはサーベイメータに近づけると0.4 μSv/h程度の表示になる。こういうものを測る際は遮蔽体は無意味かもしれない。
やさしお
PRA(4.0)を使ってこのようにスペクトルを測るには、パルスピーク高とエネルギーを関連付けてやる必要がある。
私は、入手が容易であったマントルに含まれるトリウム(232Th)の娘核種の出す複数のピークを元にこの関連付け――エネルギー校正――を行っているが、他に自然界によくある放射性物質といえば40Kがある。
40Kは自然界のカリウムに一定の割合(0.012%)で含まれており、カリウムを測れば、その割合で含まれる40K由来のガンマ線を検出できる。
そこで、入手が容易なカリウム源として、やさしおがよく使われている。
やさしおを測れば、1460 keVが確認でき、また、物理量がわかっているため、定量を行う際のソースとしても使うことが期待できる。
しかし、遮蔽体なしでは環境放射線にまぎれてしまい、まったくピークが確認できなかった。
そこで、環境放射線を遮蔽することによって、やさしおのピークが確認できるのではないかと期待して、測定をしてみた結果が以下のものである。
嗚呼……、まったくピークが見えないではないですか。orz
この測定では、放射性物質測定用遮蔽体と試料容器についてでも説明した小容量用容器を使用して測っている。
そう、試料が少なかったせいである。と、思い、大容量容器として用意したU-8容器にやさしおを詰めて測定したものがこれだ。
嗚呼、嗚呼……、やさしおのやさしいピークは、まったく検出されませんでしたとさ。orz
しかし、ブランクとの比較では明らかにパルス数が増えている。また、1000 keVあたりに微妙にピークが見えるようになったではないか。
これはつまり、私の計測器は、確かに40Kの出す放射線を検知している。ということだ。
しかし、これは光電効果によるものではなく、コンプトン効果を拾っているようである。また、カリウム由来を測りたいのはエネルギー校正を目的としているので、まったく使いものにはならない。
やはり、私の1インチウェル型の検知器の限界のようだ。物には、向き不向きがあるものなので、あきらめるべきだろう。
放射性物質が入っているかどうかわからないものを測る(その1)
さて、いよいよ実際に「これには放射性セシウムが入っているか」という測定をしてみる。
まず、試料その1「スギの花芽」。都内某所で採取した採れたて新鮮な今年のスギの花芽である。
今年のスギの花粉には放射能が含まれていて危険ではないかという話があるが、実際観測できるものだろうか。
どうやら放射性セシウム由来のピークは見えないようだ。また、パルス数でもブランクよりは多いが、ごくわずかだ。
この機器で検出可能なレベルでは放射性セシウムは含まれていないようだ。
放射性物質が入っているかどうかわからないものを測る(その2)
続いて、試料その2「近所の土ぼこり」。都内某所の道の端っこ(L型街渠)に溜まってた土をかき集めたものである。
これならばきっと放射性セシウムが含まれているに違いない。ただし、この土はこの地域の汚染状況を確認するサンプルはないので注意。どれくらいの面積から集まって溜まった土ぼこりであるかが不明なためである。
おそらく放射性セシウムからの放射線であろうピークが確認できる。パルス数は、やさしおより若干多い程度だ。つまり、それほどとんでもなく汚染された土ではないということだ。
620 keVあたりを中心としたピークがあるが、これは134Csの563 keV(8.4%)、569 keV(15%)、605 keV(97.6%)と137Cs(正確には137mBa)の662 keVが混じったもののようだ。
他にも、ブランクとは違うピークが検出されているが、134Csの796 keV(85.5%)が見当たらない。
やはりカタログにあったとおり、700 keV以上は検出効率が著しく落ちているのだろうか。
もっと多くの放射性セシウムを含んでいる物体でなければ、134Csの796 keVのはっきりとしたピークは得られないのかもしれない。
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